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IT/AIの進化による業務効率化と、今後の会計事務所の役割とは?

会計事務所ハウツー

ユアメディア編集部 ユアメディア編集部

IT/AIの進化による業務効率化と、今後の会計事務所の役割とは?

「業務の効率化に迷っている」「AIが登場して、この業界はどのように変わってしまうのだろう」というお悩みや不安は、会計事務所にお勤めの皆様におかれましては、1度は考えたことがあるかもしれません。

そこで、今回は、主にIT化やAIによって会計事務所が恩恵を受けられるものを改めて整理したうえで、

それを踏まえて、今後の会計事務所の役割の変化について見ていこうと思います。

◆「ITによる業務効率化」が謳われて久しい

これまでは職場に1,2台しかなかったPCも、今となっては1人1台が当たり前となり、会計事務所においても、会計ソフトや申告書作成ソフトなど、もはやPC無しでの業務は考えられないようになりました。

最初こそは「PC操作ができる」、「会計ソフトを導入して手書きから解放される」というだけで十分な業務効率化の効果がありましたが

時の経過に応じて全体のレベルは上がっていき、出来ること、求められることはどんどん増えてきております。

いろいろありますが、会計ソフト・記帳業務に焦点を当ててみると、現在において会計事務所の皆様において特によく使用されるものは、大きく以下の3つあたりでしょうか。

①口座連携など、API連携

概要:APIを用いて預金口座残高、入出金明細を取得して、仕訳登録を行う

効果:通帳との突合作業なく、漏れなく記帳を行える。

②自動仕訳ルール

概要:金額・摘要等の条件をあらかじめ登録し、条件に合致した場合の勘定科目で仕訳登録

効果:日常発生の取引登録の自動化により、その他記帳作業へリソースを割ける

③Excel等を用いての金額集計チェックなど

概要:元帳だけでは追いかけにくい内容や、金額の整合性などを調べる。

効果:集計漏れ・誤り等の検証・防止、科目内訳や申告書作成の基礎資料へとつながる。

これらは、多かれ少なかれ、既に利活用しているところも多く、もはやこれらの利活用無しでの業務は考えられない域にまで達しているかと思います。

◆AIの登場により、簡単な判断の補助をしてくるように

2022年、OpenAIが「ChatGPT」を公開したことにより、世の中にAIの存在が一気に知れ渡ることになりました。2025年度調査によると、全体の55.2%は、なんらかの業務で生成AIを利用しているようですので、1度は触ったことがあるという方は多いのではないかと思います。

会計事務所の業務において使用されている典型的なものとしては、領収書類のAI-OCR化かと思います。領収書類記載の品目から勘定科目を推定して、金額・勘定科目・摘要を反映してくれるものです。

さらに拡張したものですと、インボイス登録状況も踏まえての消費税区分の判定をするものもあります。領収書内に記載の登録番号を国税庁のデータベースと照合したり、インボイス要件を満たす形式の領収書か否かを判断し、消費税額、購入内容から、消費税区分(課税か非課税か、適格か非適格か、など)を判定してくれます。

これまでに謳われていたITによる業務効率化と決定的に違うところは、「人が判断していた箇所の一部分を担ってくれるようになった」というところです。

これまでは、計算・集計の自動化に重きが置かれており、例えば、紙の情報を再度PCに入力するなどの二度手間や、手入力によるケアレスミスを削減することによって「効率化」と言われていました。

しかし、AIの登場によって、世界はガラッと変わりました。これまで人間しかできないと言われていた「情報の収集・解析・判断」まで担ってくれるようになりました。

会計事務所内の業務においては、特に記帳周りにおいて相性が良く、勘定科目の推定・消費税区分の判定というところで効果を発揮してくれます。

◆会計事務所の役割は変わってきつつある

ここまでに触れたITによる効率化とAIの登場で、同じインプットのものに対しては同じアウトプットが出せるようになってきているため、記帳業務等の品質の差が無くなりつつある状況となっております。

となると、これからの会計事務所に求められるものは、効率化によって空いた時間をつかって、いかに付加価値の高い成果物を提供することができるかで今後は決まってくることになると考えます。

つまり、これらの生産性向上・効率化は、「スタートライン」として当たり前とすでになりつつある状況です。

とは言っても、関与先様によっては、API連携等に理解を得られず、未だに紙の通帳等をもとに対応しているなど、整備ができていないところもあるかと思います。

しかし、そういった関与先様は工数が増加してしまうだけでなく、顧問料というかたちで吸収することもできず、採算が取れないだけでなく、社内の生産性も大きく落としてしまうことになります。

こうなってしまうと、付加価値以前の問題で、他事務所と後れを取るばかりでなく、職員のモチベ低下などによる悪循環を生み出しかねないという事態に発展しかねません。

先ほども触れたとおり、ITによる効率化はもはや「スタートライン」です。人手不足が叫ばれている昨今、人材の確保は業界の共通課題となっております。生産性の向上と高付加価値の提供は、最重要課題として組織全体で取り組んでいくことが最も重要です。

◆付加価値の変化と、人間にしかできないこと

「付加価値」に対する考え方も変わってきました。

これまでは、9ヶ月時点をベースに利益や納税額の着地を予測したり、資金繰りのシミュレーションの予測を提示したりと、事実ベースだけでなく、予測の要素を取り入れて、先を見据えての提示をすることができることが「付加価値」と考えられてきたところがあります。

しかし、実体はExcelで9ヶ月分の累積の損益に「×12/9」をした金額を計算したものを貼り付けるだけなど、それっぽい表を作って見せるというITの利活用の域を出ていないものが多いです。

さらに、AIの登場により、元帳インプットさせれば同等、あるいはそれ以上のクオリティのシミュレーション表を作ってもらえるようになりました。お客様自身が容易にできてしまうということですので、わざわざ会計事務所が作るほどのものではなくなってしまいました。つまり、もうここには付加価値はありません。

それでは、「付加価値」というものはどのようにすれば生まれるのでしょうか?

一番大きなポイントは、単なる数字ベースだけの説明で止まらないことだと考えます。

単なる「今期はこれぐらいの利益になりそうです」や、「これぐらいの納税が発生しそうなので資金用意しておいてください」という説明においては価値が生まれなくなってしまいました。

しかし、利益や税額の着地、資金繰りの予測はビジネスにおいて非常に重要です。お客様自身で作成・予測ができるようになったとはいえ、それを踏まえて、たとえば資金の確保のために融資へ繋げたりなど、実際の行動が伴う際の助言は今後も必要になり続けることになると思います。

つまり、大事なことは、これらの予測シミュレーションを踏まえて、お客様の事情をよくヒアリングして、すり合わせて、お客様ごとに異なるソリューションを見つけ出して手を打つことになります。

また、AIは今のところ、感情を混ぜたうえでアドバイスなどを求めると、回答が脱線したり、その感情に合わせた答えになるように引っ張られやすい傾向にあります。

さらに、自分にとっては聞こえの良い答えになっているものの、課題に向き合ったり、痛いところを突かれて改善に向かえるような、本当の意味で「正しい答え」をしないことも多い印象です。

私たち会計事務所ができることは、人間として感情を理解しつつ、専門家として冷静さと整然さを兼ねてお客様に向き合うことなのかもしれません。

これは今のところ「AIにはできないお仕事」なので、それができるようになってはじめて、「付加価値」が生まれ、このAIが台頭する社会を乗りこなすことができるのかもしれません。

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