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【定着率50%向上】未経験者が「3年辞めない」税理士事務所が実践するオンボーディング戦略

転職・キャリア

ユアメディア編集部 ユアメディア編集部

経験者採用の「諦め」から生まれるチャンス

税理士事務所の所長様、日頃より採用活動お疲れ様です。

現在の税理士業界の採用市場は、経験者にとってまさに「売り手市場」の様相を呈しています。求人倍率は高止まりし、優秀な経験者の獲得競争は年々激化するばかり。多くの事務所が採用の長期化コスト高騰という消耗戦に疲弊しています。

この厳しい現実を打開するためには、視点を転換し、採用戦略を根本から見直す必要があります。

優秀な未経験者を「育てて確保する」最強の戦略

経験者の「奪い合い」から抜け出し、「自前で育てる」体制を確立することこそ、中小税理士事務所が採るべき最強の戦略です。未経験者は、事務所の文化や価値観を素直に受け入れ、将来的に事務所のコア人材となる可能性を秘めています。

しかし、「育てる」と言っても、場当たり的なOJT(On-the-Job Training)では、「育てたのに辞めてしまう」という事態を招きかねません。

なぜ、若手は辞めてしまうのか? その原因の多くは、入社後のオンボーディング(Onboarding)、つまり組織への導入・定着プロセスにあります。

「辞めない事務所」が実践するオンボーディング戦略の基本

「オンボーディング」とは、単なる入社手続きや業務研修ではありません。新入社員が組織文化に慣れ、能力を発揮し、定着するまでの一連の体系的なサポートプロセスを指します。

💡 データで見るオンボーディングの重要性

Harvard Business Reviewが引用する調査によると適切なオンボーディングプログラムを持つ企業は、従業員の定着率が50%向上し、新入社員の生産性が62%向上するという調査結果があります。特に、入社後3ヶ月間のフォロー体制が離職率に決定的な影響を与えます。

参考:厚生労働省|人材の確保・定着に成功した 企業の取組事例集
(日本企業での取り組み事例 Ⅱ. 採用活動・採用後における取組の好事例)

「辞めない事務所」は、このオンボーディングを単なる「研修」ではなく、「未来への投資」と捉え、以下の3本柱を戦略的に構築しています。

戦略の3本柱:定着と戦力化を両立させる仕組み

  • カルチャーフィットの徹底:
    単なる業務説明ではなく、事務所のビジョン、所長の哲学、働く上での価値観を最初に深く共有します。「誰 のために、何のために仕事をするのか?」を明確にし、仕事への誇りを持ってもらいます。
  • スキル・知識の体系化(マニュアル化):
    OJTを「先輩の経験と感覚」に依存させず、標準化された育成ツールとロードマップを用意します。特に、現代の顧問先ニーズに応えるため、従来の会計知識に加え、クラウド会計(freeeMoneyForwardなど)の操作と活用スキルをカリキュラムに組み込みます。
  • メンターシップ・フォロー体制の構築:
    新人が「孤独」や「不安」を感じる瞬間を徹底的に排除します。業務指導者(上司)とは別に、気軽に相談できるメンター(兄・姉役)を配置し、心理的安全性を確保します。

未経験者を3年で「一人前」にする具体的な育成プログラム

税理士事務所の業務は専門性が高く、未経験者を戦力化するには体系的な3年間のロードマップが不可欠です。

💡 ステップ1:不安を自信に変える最初の3ヶ月(「キャッチアップ期」)

この期間の目標は、不安を解消し、事務所の環境に慣れること。業務スキルより心理的側面を重視します。

期間重点課題具体的な施策成果指標
最初の1週間事務所への適応、不安解消所長とのビジョン共有、メンター紹介、PC・ツール初期設定完了、就業規則などの座学徹底。事務所環境への理解度(アンケート)、ツールの基本操作習得。
1ヶ月目会計・税務の基礎知識習得簿記3級程度の知識集中学習、専用マニュアルに基づいた入力業務。同時にクラウド会計freeeMoneyForwardなどの初期設定、インターフェース、基本的なデータ連携の流れを習得。試算表の構造理解。freeeMoneyForwardなどの基本操作テストクリア。
2〜3ヶ月目小さな成功体験の積み重ね簡易な月次巡回監査補助、ファイリングやデータチェック。クラウド会計を活用している顧問先のデータ連携サポートを担当させる。業務の完遂率、ホウレンソウの頻度と質。

💡 ステップ2:実務と並行して成長する1年目(「基礎構築期」)

インプットとアウトプットを並行させ、徐々に「会計事務所の仕事」の全体像を掴んでもらいます。

  • OJTの仕組み化と難易度の段階的引き上げ:
    先輩に同行し、「見て学ぶ」フェーズからスタートし、簡単な顧問先(個人事業主など)を「主担当」として持ち始めます(必ず先輩がダブルチェック)。
    【クラウド会計特化研修の実施】:freee,MFの各種機能(経費精算、債権債務管理、API連携など)を深く掘り下げた実務研修を実施。freee,MFを活用した顧問先への導入・運用サポートをOJTに積極的に組み込みます。
  • 資格取得支援の強化:
    税理士試験科目の受験費用や専門学校費用の補助を明示します。勤務時間の調整も含め、職員の学習意欲を物理的・精神的に支えます。
  • 定期面談の実施(モチベーション管理):
    最低でも四半期に一度は、業務の進捗だけでなく「キャリアパス」について所長や上司と話し合う場を設け、未来の目標を見せることで、日々の業務への動機付けを維持します。

💡 ステップ3:自立を目指す2〜3年目(「戦力化期」)

この期間の目標は、「指導役なしで、顧問先と適切にコミュニケーションを取り、月次業務を完遂できる自立した職員」になることです。

  • 担当クライアントの質的向上:
    難易度の高い顧問先(法人、複雑な取引)をサブ担当として経験させ、徐々に決算・申告業務のサポート比率を高めていきます。
  • 主体的な学びの奨励と専門性の芽生え:
    職員自身にリサーチ提案を求め、自律的に考える力を養います。
    特定の分野(例:事業承継、補助金、クラウド会計freee,MFの最新機能)での内部研修の講師を任せ、専門性を深掘りするきっかけを与えます。
    freee認定資格(上級エキスパートなど)の取得支援を強化し、事務所全体のデジタル対応力を底上げします。

育成成功事例と採用難の時代を勝ち抜く戦略

体系的なオンボーディング戦略は、単に定着率を上げるだけでなく、事務所の採用ブランディングを大きく強化します。

成功事例が語る強み:未来のスキルが身につく環境

「未経験者をゼロから育て、3年で戦力にする環境がある」という事実は、経験者に巡り会えない多くの事務所にとって、最大の採用アピールポイントとなります。

特に、freee,MFなどのクラウド会計を育成プログラムに組み込むことは、以下の2点において効果的です。

  1. 若手への訴求力向上: デジタルネイティブな若手層は、新しい技術を身につける機会を求めます。「最新のクラウド会計を駆使し、顧客のDXを支援できるスキルが身につく」という点は、経験者優遇の事務所にはない、未来志向の魅力として機能します。
  2. 事務所の競争力強化: 職員がfreee,MFの最新機能や活用法をマスターすることで、顧問先への提案力が上がり、結果として事務所の生産性向上と差別化に繋がります。

採用チャネルの見直し

未経験者を採用する場合、求職者は「給与」だけでなく、「育成環境」と「キャリアパス」を最も重視します。したがって、求人票では、給与や休暇以上に、上記で紹介したような具体的な育成プログラムを詳細に明記することが不可欠です。

事務所の強みを活かす発信を

税理士業界は今、経験者採用に依存する構造から脱却し、「育てる文化」を構築する過渡期にあります。オンボーディングは、未来の事務所を築くための先行投資であり、長期的な競争優位性を確立する鍵です。

育成環境を整備したら、次はその魅力を最も効果的に伝えるフェーズです。

あなたの育成体制を「見える化」しませんか?

未経験の優秀な人材は、「入社後、自分がどう成長できるか」という具体的な道筋を知りたがっています。

ユアキャリアでは、あなたの事務所が持つ「未経験者育成プログラム」や「freee,MFなどのクラウド会計を活用した具体的な研修内容」といった独自の強みを詳細に掲載できます。これにより、「未来の税理士業務を担うスキル」の習得に意欲的な、質の高い人材の応募を促進します。

「育てたのに辞められてしまう」という悪循環を断ち切り、事務所の未来を担う人材を確保するために、ぜひあなたの事務所の強みをユアキャリアで発信し、未経験者採用を成功させましょう。

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