「もらう側」も「あげた側」も知っていて損はない!財産分与に伴う税金のお話し~税金と不動産の注意点~
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はじめに
人生にはさまざまなライフイベントがありますが、中には環境の大きな変化を伴うものもあります。 例えば、離婚やパートナーとの関係解消に伴う財産分与など、生活を立て直す際の手続きを疎かにしてしまうと、後で思わぬ税金の負担が発生し、せっかくの再スタートの妨げとなる可能性があります。
特に、不動産の分与は、税金の問題が複雑に絡み合うため、慎重な対応が求められます。今回は、財産分与で知っておくべき税金の基本と、不動産にまつわる注意点を、わかりやすく解説します。
1. 財産分与は「給付」扱いで、もらった側は原則税金なし
離婚で現金や不動産などの財産を受け取ったとき、「贈与税がかかるのでは?」と心配になる方もいますが、結論から言うと、原則として所得税も贈与税もかかりません [1] [2]。
税務上、財産分与は、夫婦が共同生活の中で築いた財産を清算し、離婚後の生活を支えるための 「給付」 とみなされます。これは、個人から財産を「贈与(無償で与えること)」によって取得した場合にかかる贈与税とは、法的な性質が異なるためです [3]。
国税庁も、離婚により相手方から財産をもらった場合、通常、贈与税がかかることはないと明記しています [1]。
贈与税がかかるケース(例外)
ただし、以下のような特別な事情があると、例外的に贈与税が課税されることがあります。
1.分与された財産が過大である場合
分与された財産が、夫婦の財産状況やその他の事情を考慮してもあまりにも多すぎると判断された場合、その過大な部分については「贈与」とみなされ、贈与税が課税される可能性があります [4]。
2.税金回避が目的のいわゆる「偽装離婚」
離婚が、贈与税や相続税を不当に免れるための手段であると認められた場合、財産分与の全額または一部が贈与とみなされ、贈与税が課税されます [5]。
こうしたケースは稀ですが、極端に不公平な分与にならないよう、財産分与の割合は慎重に定める必要があります。
住宅ローン控除(減税)は適用できる?
財産分与で住宅を取得し、その際に住宅ローンを引き継いだ(債務引受した)場合、原則として住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の適用を受けることが可能です [6]。
これは、財産分与による取得が税法上「贈与」とは異なり、住宅ローン控除の適用上「新たに家屋を取得したもの」として扱われるためです [6]。ただし、適用を受けるためには、ご自身が居住すること、ローンの償還期間が10年以上であることなど、通常の住宅ローン控除の要件をすべて満たす必要があります [7]。
2. 不動産を「渡す側」にかかる税金(譲渡所得税)
財産分与で財産を受け取った側は原則非課税ですが、不動産(土地・建物など)を渡した側には、譲渡所得税(所得税の一種)が課税される可能性があります [8]。
これは、不動産を渡す行為が、税法上、時価で相手に譲渡(売却)したものとみなされるためです [8] [9]。渡した側は、財産分与の義務が消滅するという経済的な利益を得たと解釈されます。
譲渡所得税の計算方法
譲渡所得税は、不動産の譲渡によって生じた利益(譲渡所得)に対して課税されます。
譲渡所得=譲渡により得られた収入-(取得時にかかった費用+譲渡時にかかった費用)
譲渡所得がプラス(利益が出た)になった場合、分与した側は確定申告を行い、譲渡所得税を納める必要があります。
【重要】3,000万円特別控除の適用について
自宅(居住用財産)を売却した場合、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」という特例があります[10]。
この特例は、原則として配偶者や直系血族などの特別関係者への譲渡には適用できません。しかし、離婚に伴う財産分与で自宅を譲渡する場合、離婚後に分与を行うことで、譲渡の相手が配偶者ではなくなるため、この3,000万円特別控除の適用を受けられる可能性があります。
この特例を適用できれば、譲渡所得税の負担を大幅に軽減できるため、自宅を分与する場合は、離婚の成立後に分与手続きを行うことが非常に重要になります。
【重要】住宅ローンが残っている場合の注意点
分与する不動産に住宅ローンなどの残債が残っている場合でも、原則として譲渡所得の収入金額は不動産の時価となります [11]。
ただし、分与を受けた側がそのローンを引き継ぐ(債務引受)場合、その行為が実質的に贈与とみなされないか注意が必要です。財産分与に伴う債務引受は、通常は贈与税の対象とはなりませんが、不動産の時価を大幅に超えるローンを分与を受けた側が引き継ぐようなケースでは、税務上の問題が生じる可能性もあります [12]。
3. 不動産を「もらった側」が将来売るときの税金
財産分与で不動産を受け取った後、将来それを売るときにも譲渡所得税がかかります。このとき、特に重要なのが「取得費」と「所有期間」の考え方です。
取得費の考え方:分与時の時価が基準
将来の売却時に譲渡所得を計算する際の「取得費」は、元配偶者がその不動産を最初に購入した時の価格ではありません [13]。
財産分与で取得した不動産の取得費は、財産分与を受けた時点の時価となります [13]。この「取得費」の認識を誤ると、将来の税額計算に大きな影響が出ます。
所有期間の起算点:長期譲渡か短期譲渡かで税率が変わる
不動産を売却した際の譲渡所得税の税率は、その不動産の所有期間によって大きく異なります。
| 所有期間 (売った年の1月1日時点) | 税金の区分 | 合計税率の目安* |
|---|---|---|
| 5年以下(比較的短期間) | 短期譲渡所得 | 約 39.63%(所得税約30.63%+住民税9%) |
| 5年超(比較的長期間) | 長期譲渡所得 | 約 20.315%(所得税約15.315%+住民税5%) |
※ 税率は復興特別所得税(所得税の2.1%上乗せ)を含んでいます。
財産分与で取得した不動産の場合、この所有期間は、元配偶者が最初に取得した日ではなく、財産分与によってその不動産を取得した日(分与を受けた日)からカウントが始まります [8] [9]。
そのため、財産分与を受けてから5年以内に売却すると、税率の高い短期譲渡所得として課税されます。売却を検討している場合は、この所有期間を必ず確認し、売るタイミングを慎重に検討することが重要です。
4. チェックすべきポイント
離婚後の税金トラブルを避けるために、以下のポイントを必ずチェックしましょう。
- 不動産を受け取ったら「分与を受けたときの価値(時価)」を記録しておく
将来売却する際の「取得費」の根拠となります。 - 将来売る可能性があるなら、5年以上所有してから売るのがおすすめ
税率の低い長期譲渡所得の適用を受けるためです。 - 不動産を渡す側は、売るのと同じ扱いになることを念頭に利益の有無を計算
譲渡所得が発生する場合は、確定申告が必要です。 - ローン残債がある場合は、債務引受の有無と金額を明確にする
分与を受けた側がローンを引き継ぐ場合でも、原則として譲渡所得の収入金額は不動産の時価となります。 - ローンを引き継いだ場合は、住宅ローン控除の適用要件を確認する
財産分与による取得でも、要件を満たせば住宅ローン控除を受けられる可能性があります [6] [7]。 - 分与内容が不公平でないか、税理士など専門家に相談する
過大な分与とみなされ、贈与税が課税されるリスクを避けるためです。
離婚は人生の再スタートです。税金の問題でつまづかないよう、財産分与の取り決めをする際には、税理士や弁護士などの専門家に相談し、税務上の影響を事前に確認することをおすすめします!
参考文献
[1] No.4414 離婚して財産をもらったとき. 国税庁
[2] 離婚時の財産分与ではどんな税金がかかるの?. SGH
[3] 財産分与と税金の関係とは?【弁護士が解説】. デイライト法律事務所
[4] 財産分与に税金はかかる? かかるケースや注意点を解説. 朝日新聞デジタル
[5] 離婚時の財産分与は税金がかかるの? 課されるケースや注意点. 弁護士法人V-Best
[6] 財産分与により住宅を取得した場合. 国税庁
[7] No.1237 離婚による財産分与で居住用家屋の共有持分を追加取得した場合の住宅借入金等特別控除. 国税庁
[8] No.3114 離婚して土地建物などを渡したとき. 国税庁
[9] 財産分与で譲渡所得税がかかる?長期譲渡・短期譲渡の違いも解説. 江戸川不動産
[10] No.3302 マイホームを売ったときの特例. 国税庁
[11] 財産分与に関する課税関係. 下屋税理士事務所
[12] 債務引受・債務免除で贈与税が課税されるリスクに注意!. Legal Service.
[13] 離婚で取得した不動産を売却した場合の確定申告. みつ葉会計事務所
