【経験者採用が厳しい時代の採用戦略】データ分析から見る税務経験者が求める「給与」と「働き方」
目次
求人を出しても応募ゼロ…経験者採用が「厳しい時代」の現実
「求人を出しても若手が来ない」「経験者を採用したいのに全く応募がない」
これは、多くの税理士事務所の所長先生方が抱える共通の悩みです。特に、実務をスムーズに回せる経験者層(実務経験3年〜5年)の採用は、年々難易度を増しています。彼らは事務所の安定的な成長に不可欠な中核人材ですが、採用市場において非常に希少な存在となっています。
本記事では、この採用難の背景をデータで分析し、限られた税理士経験者層が「本当に」求めている条件を深掘りします。そして、採用に成功している事務所が実践する「働き方改革」に基づいた具体的な戦略を提示します。
この記事を読み終える頃には、貴所の採用活動における課題が明確になり、競合に打ち勝つための具体的なアクションプランが見えているはずです。
現状分析 – 税理士業界で経験者採用が困難な状況


参考データ
国税庁 税理士制度
税理士登録者・税理士法人届出数
税理士実態調査報告書
税理士登録者数全体は微増傾向にあるものの、60歳以上の層が占める割合が拡大しています。
一方で、実務経験を積み、即戦力として期待される30代から40代前半の中核層の増加ペースは、少子化の影響もあり鈍化しています。
この人口構成のいびつさが、経験者採用の最大の壁となっています。採用市場では、有限で希少な「経験者」を、専門特化型事務所、大手税理士法人、さらにインハウスの経理部門やコンサルティングファームまでもが奪い合っている状況です。
「経験者」の定義と市場の広がり
かつての経験者採用は「税理士試験科目合格者で実務経験5年以上」などが主流でしたが、採用難の現在、定義は広がりを見せています。
- 経験者: 実務経験3年以上。高度な専門スキルと即戦力性を期待される。
- 準経験者: 簿記2級以上を持ち、経理の実務経験が1年程度ある層。教育投資を前提に、将来の経験者候補として採用される。
採用に成功している事務所は、従来の「経験者」に固執せず、「準経験者」層までターゲットを広げ、育成体制を強化することで、中長期的な人材確保を図っています。
深掘りリサーチ結果 – 経験者層が求める「給与」以外の条件
税理士経験者は、単に給与が高いだけの事務所にはもはや魅力を感じません。彼らが本当に求めているのは、「キャリア成長」と「ワークライフバランス」の両立です。
1. 給与のベースアップと明確な評価制度
公認会計士・税理士 / 令和5年 賃金構造基本統計調査のデータによると、経験者(実務3〜5年)の平均年収は500万円〜650万円が市場の目安です。しかし、求職者は現職からの大幅な給与アップ(100万円程度)を希望するケースが多く、この水準をクリアすることは最低条件となります。
さらに重要なのが「評価制度」です。属人的な評価ではなく、「何をすれば昇給・昇格するのか」という基準が明確であること。スキルや売上への貢献度が正当に評価される環境が、経験者の定着とモチベーション維持に不可欠です。
2. リモートワークとフレックスは「必須条件」
リサーチ結果から、リモートワークとフレックスタイム制度は、特に優秀な経験者層にとって、もはや「あれば嬉しい」福利厚生ではなく、「なくてはならない」必須条件となっています。
| 働き方の希望 | 経験者の意識 | 採用上のメリット |
| リモートワーク | 満員電車からの解放、プライベート時間確保、子育てとの両立。 | 採用エリアの拡大:通勤圏外の地方在住の優秀な人材も採用可能に。 |
| フレックスタイム | 確定申告期以外の柔軟な時間管理、資格試験勉強時間の確保。 | ライフステージへの理解:企業文化として多様な働き方を許容する姿勢をアピール。 |
特に、クラウド会計(freee、MoneyForwardなど)などのITツールを積極的に導入し、技術的な優位性をアピールできている事務所は、「効率的な環境で働ける」という魅力が加わり、応募が増える傾向にあります。
課題と展望 – こうすれば応募が来るという条件
経験者採用の成功は、「いかに競合他社より魅力的な条件を提示できるか」にかかっています。
1. 経験年数別:刺さる求人作成の極意
求人票では、誰に向けた求人なのかを明確にし、その層が求める最大のメリットを打ち出す必要があります。
- 3年未満(準経験者・若手)へ:
訴求点: 「教育とキャリアパス」。具体的な研修プログラム、先輩社員のメンター制度、税理士試験休暇やサポート体制を明記。 - 3〜5年(中核層)へ:
訴求点: 「裁量権とスキルアップ」。マネージャーポストへの具体的な昇格基準、専門特化業務(例:M&A、国際税務など)の担当機会を具体的に示す。 - 5年以上(ベテラン・即戦力)へ:
訴求点: 「自由な働き方と専門性」。週に数日のリモートワーク、コアタイムなしのフレックス、専門業務に専念できる環境、給与水準への即戦力評価を明確に提示。
2. リモート・フレックス導入の具体的なステップ
柔軟な働き方を提示することは、採用競合に勝つための決定打となります。
- ITインフラ整備: セキュリティを確保した上でのクラウド会計、チャットツール、Web会議システムの導入。
- ルール策定: コアタイムの設定(フレックスの場合)、リモートワーク中の業務進捗管理方法、コミュニケーションルールの策定。
- 求人票への明記: 「フルリモート可能」「週3リモート実績あり」「フレックスタイム制度導入済み」と具体的に記載し、事務所のオープンな姿勢を示す。
これにより、子育てや介護と両立したい人材、遠方在住の優秀な人材にもリーチすることが可能となり、採用のパイが劇的に広がります。
結論:採用難を解決し、事業を加速させるためのアクション
税理士経験者層は、業務負荷に見合った給与、そして何よりも「自分らしい働き方」と「未来への成長」を求めています。このニーズに応えることが、採用難の時代における唯一の突破口です。
貴所が今取るべき具体的なアクションは以下の通りです。
- 働き方の柔軟化: リモートワークやフレックス制度の導入を真剣に検討し、求人条件として明記する。
- 求人情報のアップデート: 経験年数ごとに求められる条件(キャリアパス、専門性)を明確にし、既存の求人情報をブラッシュアップする。
- 専門性の高いメディアの活用: ターゲット層に確実に情報を届けるために、税理士・会計業界に特化した採用メディアを活用する。
貴所の採用課題解決をユアキャリアがサポートします
「リモートワークを導入したいが、どう求人票に書けば良いか分からない」「経験者が求める条件を具体的にどう設定すべきか知りたい」
そんな所長先生のために、弊社ユアキャリア(https://urcareer.jp/)は、税理士業界専門のエージェントとして、最新の市場データに基づいた採用コンサルティングと求人掲載サービスを提供しています。
貴所の「モダンな働き方」や「専門性」を、求職者に対し最も魅力的に伝えるためのサポートをお約束します。採用戦略の再構築、優秀な経験者層へのリーチ拡大は、ユアキャリアにご相談ください。
