生命保険の種類と近年の税制改正について
目次
保険の活用により、会社をしっかり守りながら節税につなげることができますが、近年税務に関するルールが大きく変更されている点に注意が必要です。さまざまな保険の種類や最新の税務処理について、改めて内容を確認しましょう。
保険の種類とその特徴
民間保険の主な分類
民間保険の種類は次の3種類に分類することができます。
生命保険
(第一分野) |
死亡のリスクに備えるもの |
損害保険
(第二分野) |
交通事故・火災・地震・風水害・盗難などのリスクに備えるもの |
第三分野 | 生命保険(第一分野)と損害保険(第二分野)以外のものでガンなどの病気やけが、介護などのリスクに備えるもの |
生命保険の主な種類
さらに、生命保険は次の4種類に分類することができます。
定期保険 | 保険期間が一定期間のもの
一般的には満期保険金、解約返戻金がない、もしくは少額なので貯蓄性はない 保険料が他と比べて安い |
養老保険 | 保険期間が一定期間のもの
満期保険金、解約返戻金があるので貯蓄性がある |
終身保険 | 保険期間が一生涯のもの
満期保険金はないが解約返戻金があるので、一部貯蓄性がある。 |
個人年金保険 | 一定期間保険料を積み立て、その後、積立額をもとに年金が支給される
貯蓄の意味合いが強い |
税制上の影響と変更点
これまでは、法人向けの保険商品の中で、支払った保険料を全額経費として計上できるものが多く、節税の手段として利用されていましたが、近年の税制改正でこれらの扱いが見直されています。
2019年税制改正:法人税の取り扱いの見直し
2019年7月8日以降に契約された※1、2の法人向け「定期保険」や「第三分野保険」の保険料に関する取り扱いが変更されました。
この改正によって、以前に販売されていた保険商品の中で、支払保険料がすべて損金になり、かつ解約時に払った保険料の80%以上が戻ってくるような節税保険商品に、国税庁からNGが出ることとなりました。
※1:解約返戻金がなく、短期払いのものは同年10月8日以降
※2:適用時期をさかのぼる遡及適用はなし
改正内容
高解約返戻率 | 保険料の取扱い |
50%以下 | 当期支払保険料は全額損金に計上 |
50%超70%以下 | 保険期間当初4割期間は当期支払保険料の6割損金に計上、4割資産に計上
残り6割期間は全額損金に計上 保険期間残り4分の1に資産計上分を均等に取り崩し損金に計上 |
70%超85%以下 | 保険期間当初4割期間は当期支払保険料の4割損金に計上、6割資産に計上
残り6割期間は全額損金に計上 保険期間残り4分の1に資産計上分を均等に取り崩し損金に計上 |
85%超 | 保険期間当初10年間は最高返戻率の1割損金に計上、9割資産に計上
11年目以後、返戻率のピーク(その年の保険料に対する返戻率が70%を超える場合にはその期間の最後の年)までは当期支払保険料の3割損金に計上 7割資産に計上、その後は全額損金に計上 上記期間経過かつ解約返戻金が最高となる期間経過後、残り期間で資産計上分を均等に取り崩し損金に計上 |
年換算支払保険料が30万円以下の場合
最高解約返戻率70%以下かつ一被保険者あたり年間保険料30万円以下の契約は全額損金に計上
2021年税制改正:法人向け保険を個人に名義変更する際の所得税の取扱いの見直し
2021年7月1日以後※には、法人から個人へ名義変更された法人向け保険についても取扱いが見直されました。
これまで保険の権利は解約返戻金の額で評価されていたため、低解約返戻金型逓増定期保険や、復旧することができる払済保険を利用した「名義変更プラン」とよばれる節税手法が存在していました。
まずは法人契約で保険加入し、高額な保険料を法人が負担します。数年後、低額で保険の権利を法人から個人へ名義変更します。解約した際に跳ね上がった解約返戻金を個人で受け取ることができる、というものでした。
この手法に対し、改正により国税庁からNGが出されました。
※2019年7月8日以後の契約に遡及適用されます
改正内容
①支給時の解約返戻金の額が支給時の資産計上額の70%未満である保険契約等に関する権利を支給した場合には、支給時の資産計上額により評価する。
②復旧することのできる払済保険その他これに類する保険契約等に関する権利を支給した場合には、支給時の資産計上額に、前述の(1)の取扱いにより法人が損金に計上した金額を加算した金額により評価する。
おわりに
今回は、生命保険の種類と近年の税制改正による影響をご紹介してきましたがいかがでしたでしょうか。
保険商品の本来の目的は「日常生活で起こる様々なリスクへの備え」であるため、税負担の軽減だけを重視するのではなく、各種保険の特徴を踏まえ、保険契約を上手に活用していくことが大切と言えるでしょう。
今回ご紹介した内容が、生命保険に関する理解の一助となれば幸いです。
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