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【令和6年度改正】中小企業向け賃上げ促進税制を解説!

税金・会計ニュース

ユアメディア編集部 ユアメディア編集部

賃上げ促進税制は、法人や個人事業主が従業員に対する給与の支給額を前年度よりも増やすことにより、法人税や所得税の税額控除が受けられる制度です。

令和4年度の税制改正により、所得拡大促進税制という制度から、賃上げ促進税制という新名称のもとさらに節税効果が高い制度となりましたが、令和6年度税制改正によって中堅企業向けの新設や上乗せ措置の見直し等、内容が拡充され、適用時期も3年延長となりました。

本記事では、中小企業向け賃上げ促進税制について、制度の概要や令和6年度の改正による主な変更点を解説します。

賃上げ促進税制とは

 賃上げ促進税制は、従業員への賃上げや人材育成への投資に積極的な事業者が、所定の税額控除を受けられる制度です。

 青色申告書を提出する事業者で従業員の給与等を増加させた場合に、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除することができる為、賃上げ促進税制を活用することで、賃上げによる実質的な会社負担を抑えることができます。

 この制度は企業規模に応じて、以下の3つに分かれています。

  • 中小企業向け賃上げ促進税制
  • 中堅企業向け賃上げ促進税制(新設)
  • 大企業向け賃上げ促進税制

特に、中小企業向け賃上げ促進税制は、一定の要件を満たす法人と個人事業主を対象にしており、適用を受けるための要件が大企業向けよりも簡易で、税額控除率も高く設定されています。

令和6年度改正の中小企業向け賃上げ促進税制の内容と主な変更点

 中小企業については欠損法人も多く、改正前の賃上げ促進税制では、赤字などの厳しい業況の中においても賃上げを行っている中小企業が税制の適用を受けることができず、利用しづらい制度となっていました。

令和6年度の改正では、以下の変更点が導入されました。

繰越控除制度の創設

当年度の税額から控除できなかった額について、5年間の繰越が可能となりました。ただし、繰越控除をする事業年度の全雇用者の給与等支給額が前年度の全雇用者の給与等支給額を超える必要があります。

上乗せ措置の導入

「くるみん」や「えるぼし」の認定を受けた企業に対する上乗せ措置が導入され、最大控除率が40%から45%に引き上げられました。

これにより、「子育てと仕事の両立支援」や「女性活躍の推進の取り組み」に積極的な企業を後押しし、賃上げ促進税制の効果を賃金だけでなく「働き方」全般にプラスの効果を及ぼすことが期待されています。

(1)対象 ※中小企業の範囲に改正前と変更なし

青色申告書を提出する中小企業者等(資本金1億円以下の法人、農業組合等)

または従業員数1,000人以下の個人事業主

(2)適用要件 ※改正前と変更なし

全雇用者の給与等支給額が前年度と比較した時に1.5%以上増加していること。

(3)適用時期

令和6年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度

(個人事業主は、令和7年から令和9年までの各年)

(4)税額控除額 ※改正前と変更なし

 ①(適用年度の全雇用者の給与等支給額ー前年度の全雇用者の給与等支給額)×控除率

 ②適用年度の法人税額×20%(控除上限) 

 ①②いずれか少ない金額

(5)控除率

(必須要件)

・全雇用者の前事業年度から適用事業年度の給与等支給額の増加割合

 1.5%以上:15%

 2.5%以上:30%

(上乗せ措置)

・教育訓練費の増加割合が5%以上かつ

         教育訓練費が全雇用者の給与等支給額の0.05%以上:10%加算

・プラチナくるみん認定・プラチナえるぼし認定・

       くるみん認定・えるぼし認定(2段階目以上)のいずれか:5%加算

(6)繰越控除制度の創設

当年度の税額から控除できなかった額(控除限度超過額)について、5年間の繰越が可能です。ただし、繰越控除をする事業年度の雇用者給与等支給額が前年度の雇用者給与等支給額を超える場合に限ります。

用語の定義

給与等支給額

国内雇用者(法人又は個人事業主の使用人のうちその法人又は個人事業主の国内に所在する事業所につき作成された賃金台帳に記載された者をいいます。パート、アルバイト、日雇い労働者も含みますが、使用人兼務役員を含む役員及び役員の特殊関係者、個人事業主と特殊の関係のある者は含まれません。)に対する給与等(俸給・給料・賃金・歳費及び賞与並びに、これらの性質を有する給与(所得税法第28条第1項に規定する給与所得)をいいます。退職金など、給与所得とならないものについては、原則として給与等に該当しません。)の支給額をいいます。ただし、給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額がある場合には、当該金額を控除します。

教育訓練費

国内雇用者の職務に必要な技術又は知識を習得させ、又は向上させるために支出する費用のうち一定のものをいいます。具体的には、法人が教育訓練等を自ら行う場合の費用(外部講師謝金等、外部施設使用料等)、他の者に委託して教育訓練等を行わせる場合の費用(研修委託費等)、他の者が行う教育訓練等に参加させる場合の費用(外部研修参加費等)などをいいます。

くるみん、えるぼしの認定

「くるみん」とは、次世代育成支援対策法に基づく一般事業主行動計画を策定した事業者のうち、一定の基準を満たしている事業者を認定する制度です。「トライくるみん」「くるみん」「プラチナくるみん」の種類があります。

賃上げ促進税制の対象となる認定は「くるみん」または「プラナチくるみん」です。

「えるぼし」認定は女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画の届出をおこなった事業者のうち、一定の基準を満たす事業者の認定制度です。「えるぼし(1段階目)」「えるぼし(2段階目)」「えるぼし(3段階目)」「プラチナえるぼし」の4種類があります。

賃上げ促進税制の対象は「えるぼし(2段階目)」から「プラチナえるぼし」までです。

注意点

 賃上げ促進税制の必須要件は全雇用者の雇用者給与等支給額の増額です。賃上げを行っても、従業員の離職によって総額が減少してしまうと、要件を満たさず制度の適用を受けることができません。

 また、令和6年度改正により、5年間の繰越控除制度が創設されましたが、繰越控除をする事業年度についても前年度の雇用者給与等支給額を超えていなければならず、実際に税額控除する事業年度まで毎年、繰越未済額の明細書を確定申告書に添付する必要があります。

まとめ

 賃上げ促進税制は、従業員の給与等を前年度より増加させた事業者を対象に、給与等増加額の一部を法人税や所得税から税額控除を行える制度です。

 黒字の事業者が賃上げを行った場合、その賃上げ分が損金算入(税務上費用計上)されることにより、約30%分の税負担が軽減されることになります。これに加えて、賃上げ促進税制の適用によって、賃上げ分の最大45%が税額控除されるので、賃上げ分の約75%相当額について税負担が軽減されることになり、実質的な会社負担は約25%となります。

 従業員を抱えている事業者様は、ぜひ一度、賃上げ促進税制が適用できそうかご確認ください

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