先生教えて!!令和3年度税制改正(法人課税)の内容とは?
今回は、現役税理士の先生に令和3年度税制改正の中の法人課税について、わかりやすくご解説いただきました!
はじめに
令和3年度税制改正の法案が2021年3月26日に国会で可決・成立しました。
今回の改正の目玉として、デジタルトランスフォーメーション(DX)や脱炭素に取り組む企業は一定の税制優遇を受けられる旨の改正があります。
これらの規定が令和3年8月(産業競争力強化法等の一部を改正する法律の施行日)から開始しましたので、それらも踏まえて、改めて令和3年度税制改正をまとめたいと思います。
本記事では、主に中小企業(資本金1億円以下の法人)に関連する税制改正の内容を中心に、【誰が】【いつ】【どうなる】という形式で、噛み砕いて概要を解説していきます。
デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制
【誰が】
「デジタル環境の構築のためのソフトウェア&付随する備品等」を取得したり、「デジタル環境の構築のためのクラウドに係る初期コスト」を支出した企業で、事業適応計画の認定を受けた青色申告法人
【いつ】
産業競争力強化法の改正法施工日(令和3年8月)から令和5年3月31日までの間の取得・支出
【どうなる】
取得価額の3%(一定の場合5%)の税額控除or取得価額の30%の特別償却
(カーボンニュートラル投資促進税制とあわせて「当期の法人税額の20%」が上限)
カーボンニュートラル投資促進税制
【誰が】
「中⻑期環境適応⽣産性向上設備」や「中⻑期環境適応需要開拓製品⽣産設備」を取得した企業で、中⻑期環境適応計画の認定を受けた青色申告法人
【いつ】
産業競争力強化法の改正法施工日(令和3年8月)から令和6年3月31日までの間の取得
【どうなる】
取得価額の5%(一定の場合10%)の税額控除or取得価額の50%の特別償却
(DX投資促進税制とあわせて「当期の法人税額の20%」が上限)
中⼩企業向け所得拡⼤促進税制の改組
【誰が】
資本金1億円以下の法人で一定の者
【いつ】
令和3年4月1日~令和5年3月31日までに開始される事業年度
【どうなる】
1.継続雇用者判定がなくなり、単に前期比での増加額を集計するのみとなった。
2.判定時には雇用調整助成金(以下、「雇調金」と言います。)を除外せず計算することとなった。
※税額控除額計算時は従来通り給与総額から雇調金を除外して計算。
≪中⼩企業向け所得拡⼤促進税制の整理≫
(平成30年4月1日~令和3年3月31日までに開始される事業年度)
【要件】
1.給与総額が前年度以上(雇調金除外後)
2.継続雇用者給与等支給額(雇調金除外後)が前年度比で1.5%以上(上乗せの場合2.5%以上)増加
【控除額】
1.前年度からの給与総額の増加額(雇調金除外後)に対して、15%の税額控除2.人材投資や生産性向上に取り組む企業は税額控除率を25%に上乗せ
(令和3年4月1日~令和5年3月31日までに開始される事業年度)
【要件】
1.給与総額(雇調金除外前)が前年度比で 1.5%以上(上乗せの場合2.5%以上)増加
【控除額】
1.前年度からの給与総額の増加額(雇調金除外後)に対して、15%の税額控除
2.人材投資や生産性向上に取り組む企業は税額控除率を25%に上乗せ
中小企業の経営資源の集約化に資する税制の創設
【誰が】
⻘⾊申告書を提出する中⼩企業者のうち、令和6年3⽉31⽇までの間に中⼩企業経営強化法の経営⼒向上計画の認定を受け、10億円以下、かつ、自社株式を譲渡対価として、株式買収をしたもの
【いつ】
中小企業等経営強化法の改正法施行日(令和3年8月)から令和6年3月 31 日までの株式買収
【どうなる】
株式の取得価額の70%以下の金額を、準備金の積立により損金算入できる。その後買収した株式を売却した場合や簿外債務が発⽣した場合には、取り崩すことになるほか、何もなくても5年据え置いた後、6年⽬から10年⽬にわたり均等に取り崩して益⾦算⼊する必要がある。
例:5億円で中⼩企業を買収した場合
(1年目)
事業再編投資損失 3.5億円/中⼩企業事業再編投資損失準備⾦ 3.5億円
(6年⽬から10年⽬)
中⼩企業事業再編投資損失準備⾦ 7千万円/投資損失準備⾦取崩益 7千万円
その他中小企業向け特例
1.中⼩企業者等の法⼈税の軽減税率の特例(租特税率=15%)の適⽤期限を2年延⻑
2.中小企業投資促進税制=一定の設備投資を行った場合に、特別償却(30%)又は税額控除(7%)のいずれかの適用を認める措置
・・・これまで対象とならなかった下記の事業を含め、2年延長
イ 不動産業
ロ 物品賃貸業
ハ 料亭,バー,キャバレー,ナイトクラブその他これらに類する事業(⽣活衛⽣同業組合の組合員が⾏うものに限る。)
3.中小企業経営強化税制=中小企業等経営強化法の認定を受けた計画に基づく投資を行った場合に、即時償却又は税額控除(10%)のいずれかの適用を認める措置
・・・経営資源集約化設備(D類型)を追加したうえで2年延長
おわりに
いかがでしたでしょうか。
「DX」と「脱炭素」を、国として本格的に推し進めていきたいことが伝わってきますね。
上記の解説はあくまで概要になりますので、実際に適用される場合は事前に税理士と相談の上、実行するようお願いいたします。
最後までお読みいただきありがとうございました。
少しでもお役立ていただけましたら大変幸いです。
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