ニュースを解説|売上5500万円からたった5年で60億円!?AI新興企業の粉飾決算
目次
1 AI新興企業が粉飾決算!?
AIを活用して、テレビ会議の発言を自動的に議事録化するサービスを提供していた、新興企業「オルツ」。近年、急成長を謳っていましたが、その実態は「粉飾決算」による虚構の成長でした。
粉飾決算とは、企業が故意に売上や利益を水増しし、実態以上に業績を良く見せかける行為です。この会社は「循環取引」と呼ばれる典型的な手口を用いて、売上を不自然に膨らませていました。
実際の売上推移を見てみると、その異常さが一目でわかります。
- 2020年12月期:5500万円
- 2021年12月期:9.5億円(前年比約17倍)
- 2022年12月期:26億円( 〃 約2.7倍)
- 2023年12月期:41億円( 〃 約1.6倍)
- 2024年12月期:60億円( 〃 約1.4倍)
もちろん、新興企業の中には短期間で急成長を遂げる例もあります。例えば、上場企業「エフコード」は過去に売上が2倍近く伸びたケースもあります。しかし、売上が5年間で100倍以上という急成長は、経験則から見ても極めて不自然です。特に「AI議事録作成サービス」というニッチな分野で、ここまでの売上増加が正当化できるとは到底考えられません。
2 循環取引で売上の9割を水増ししていたことが発覚
調査報告書によれば、この企業の売上の約9割が「循環取引」による水増しであることが判明しました。
循環取引とは、取引先と共謀して架空の発注・受注を繰り返す行為です。例えば、A社がB社に架空の発注を行い、B社がそれをA社に転注するような循環を作り上げ、実際にはモノやサービスが動いていないにもかかわらず「売上が計上された」ように見せかけます。
今回の事例では、この循環取引によって会社の売上の大部分が「存在しない売上」となっていたのです。結果的に、外部投資家や株主、そして市場全体を欺いていたことになります。
3 法律的な問題と今後の影響
上場企業による粉飾決算は、金融商品取引法における重大な違反行為です。虚偽の有価証券報告書を提出すれば、経営陣は刑事罰に問われる可能性があります。さらに、損害を被った投資家から民事訴訟を起こされるリスクもあります。
この事件は、単なる「一企業の不正会計」にとどまらず、AIやスタートアップ市場全体に対する信頼を大きく損ねる出来事となりました。新興企業が資金を調達する上で、透明性と信頼性がいかに重要かを改めて浮き彫りにしています。
まとめ
- AI関連新興企業が循環取引によって売上を9割水増し
- わずか5年で売上5500万円 → 60億円という不自然な急成長
- 金融商品取引法違反による刑事・民事責任の可能性
- 今後、AIベンチャー市場全体への信頼低下が懸念
