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【超入門】「相続時精算課税制度」ってなに? 暦年課税との違いを徹底解説

税金・会計ニュース

ユアメディア編集部 ユアメディア編集部

はじめに:親から子へ、財産を渡すということ

「親が元気なうちに、まとまったお金を子どもに渡したい」「将来の相続税の負担を少しでも減らしたい」—そう考える方は少なくありません。しかし、財産を渡す「贈与」には、原則として贈与税という税金がかかります。

この贈与税の仕組みには、大きく分けて「暦年課税(れきねんかぜい)」と「相続時精算課税(そうぞくじせいさんかぜい)」の2種類があります。特に後者の「相続時精算課税制度」は、2024年の税制改正で非常に使いやすくなり、注目を集めています。

本連載では、この「相続時精算課税制度」について、制度を知らない方にも分かりやすく、その仕組み、メリット・デメリット、そして賢い活用法を全3回にわたって徹底解説します。第1回は、制度の基本的な仕組みと、従来の暦年課税との決定的な違いについて見ていきましょう。

1. 「相続時精算課税制度」の基本のキ

相続時精算課税制度とは、生前贈与の際に一定額までは贈与税を非課税とし、贈与者が亡くなった時(相続時)に、その贈与財産を相続財産に合算して相続税を計算するという、文字通り「相続の時に精算する」ための制度です [1]。

1-1. 誰から誰へ贈与できるの?(適用要件)

この制度を利用するには、贈与する人(贈与者)と、贈与を受ける人(受贈者)にそれぞれ要件があります。

区分要件
贈与者 (財産を渡す人)贈与をした年の1月1日時点で60歳以上の父母または祖父母 [2]。
受贈者 (財産を受け取る人)贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上の子または孫 [2]。

1-2. 2,500万円の「特別控除」とは?

この制度の最大の特長は、「特別控除」として、贈与者一人あたり累計2,500万円までの贈与が非課税になる点です。

例えば、父親から子どもに500万円、翌年に1,000万円、さらに翌年に1,000万円と、合計2,500万円を贈与しても、贈与税はかかりません。

この2,500万円の枠は、贈与者が亡くなるまで何度でも利用できます。

1-3. 2,500万円を超えたらどうなる?

累計の贈与額が2,500万円の特別控除枠を超えた場合、その超えた部分に対して一律20%の贈与税がかかります [2]。

(相続時精算課税制度の仕組み)

贈与者(60歳以上の親・祖父母) → 受贈者(18歳以上の子・孫)

累計2,500万円まで → 贈与税非課税

2,500万円を超えた部分 → 一律20%の贈与税(相続時には相続税の前払い分になります)

贈与者が亡くなった時 → 贈与財産を相続財産に合算して相続税を計算・精算(金額によっては還付になることもあります)

2. 暦年課税との決定的な違い

相続時精算課税制度を理解する上で、もう一つの贈与税の仕組みである「暦年課税」との違いを把握することが極めて重要です。

2-1. 暦年課税の仕組み

暦年課税は、私たちが一般的に「贈与税」としてイメージする制度です。

  • 年間110万円の基礎控除があり、1月1日から12月31日までの1年間で受けた贈与の合計額が110万円以下であれば、贈与税はかからず、申告も不要です [3]。
  • 110万円を超えた部分には、贈与額に応じて10%から最大55%の税率が適用されます(超過累進課税) [3]。

2-2. 相続時精算課税制度の「選択」の重み

相続時精算課税制度は、受贈者(子や孫)が選択することで適用される制度です。しかし、一度この制度を選択すると、その贈与者からの贈与については、二度と暦年課税に戻ることはできません [2]。

(表1:暦年課税と相続時精算課税の比較)

項目暦年課税相続時精算課税制度
贈与時の基礎控除年間110万円年間110万円(2024年改正後) 累計2,500万円の特別控除
贈与時の非課税枠年間110万円累計2,500万円+年間110万円
税率10%〜55%(超過累進課税)2,500万円超の部分に一律20%
相続時の加算原則、相続開始前7年以内の贈与のみ加算(2024年改正後)贈与時の基礎控除額(年間110万円)を除いた部分の
贈与財産を相続財産に合算
選択後の変更変更不可(一度選択すると、その贈与者からの贈与は暦年課税に戻れない)

3. 第1回のまとめと次回予告

相続時精算課税制度は、暦年課税とは全く異なる考え方に基づいた制度です。

  • 暦年課税:毎年少額ずつ非課税で贈与し、贈与の時点で税金を完結させることを目指す。
  • 相続時精算課税:大きな金額を非課税で贈与し、最終的に相続の時にまとめて精算する。

特に2024年の改正により、相続時精算課税制度にも「年間110万円の基礎控除」が新設され、その利便性が飛躍的に向上しました。

次回、第2回では、この2024年改正の具体的な内容に焦点を当て、新しくなった制度のメリットとデメリットを徹底的に深掘りします。

参考文献

[1] 相続時精算課税制度とは?メリット・デメリットをわかりやすく解説 – 三菱UFJ銀行
[2] No.4103 相続時精算課税の選択 – 国税庁
[3] No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税) – 国税庁

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