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医療保険を法人で加入するメリットは?注意点も解説

税金・会計ニュース

ユアメディア編集部 ユアメディア編集部

医療保険は通常は個人で加入するものですが、法人を契約者とする方法もあります。

法人契約の医療保険では、保険料が法人の損金になるといったメリットがある一方で、注意が必要な点もあります。法人契約の医療保険の中でも、社長などの役員が被保険者のものに注目し、メリットと、注意点をご紹介します。

医療保険を法人で加入するメリット

社長を被保険者、法人を契約者・受取人とした医療保険は、支払う保険料は法人から支払い、もらう保険金も法人に入金されます。

このような法人契約の医療保険のメリットは、以下のとおりです。

社長が病気の際に、保険金を法人の経営資金にできる

特に中小企業では、経営を社長の力に頼っている比重が高いことが多くあります。もし社長が病気などで長期間出勤できない場合、会社の経営に大きな影響を与える可能性があります。そうした場合に、医療保険の保険金は法人の経営資金として活用できるでしょう。

医療保険には、入院や手術の保障だけでなく、三大疾病や生活習慣病などの長期の入院保障に対応しているものなどさまざまです。社長が働けなくなった場合に、法人の経営がどうなるのか、必要な保障金額を考えて加入するとよいでしょう。

保険料を全額損金にできる(契約による)

医療保険といっても、さまざまなタイプがあります。掛け捨ての定期タイプであれば、保険料はすべて法人の損金にできます。

医療保険だと、終身のほうが安心という方も多いでしょう。短期払いの終身保険の場合、年間の支払保険料が30万円以下の場合は、全額を損金にできます。30万円以上の場合は一部だけが損金となりますが、もし個人に名義変更する場合にはその時点で全額が損金となります。長い目で見れば、どちらも支払保険料は損金になるといえるでしょう。

(2019年に法人保険の税制改正がおこなわれたため、上記の取り扱いはその時以降に契約したものになります)

保険料払い込み後に個人に名義変更すれば、保険料の負担なく保障が継続できる

社長が退任後も、法人名義から個人名義に変更すれば、保障を継続できます。
終身保険では、終身で保障されるので安心です。名義変更後は個人契約になっているので、保険金を受け取る時は、非課税で受け取れます。法人で保険料払込完了後の名義変更なので、社長は今後保険料の負担はゼロで、保障が継続可能です。

しかし、個人への名義変更時にはいくつか注意点がありますので、次の項目でみていきましょう。

法人加入の医療保険を名義変更する際の注意点

法人契約から個人へと名義変更する際の税務処理と、名義変更する際の注意点を紹介します。

名義変更の際の税務処理

保険の名義変更は、保険契約を社長個人へ現物支給する扱いになります。

具体的には、保険契約を評価して、その金額で譲渡する処理になります。評価額は、解約返戻金相当額の金額です。解約返戻金のない医療保険の場合は、保険契約の評価は一般的には入院日額の10倍で、多くても数十万程度です。

譲渡する方法は、給与として支給するか、または退職時であれば退職金の一部とする処理にすることができます。

退職所得は所得税が優遇されていますので、役員退任時に名義変更をおこない、保険契約の譲渡を退職金の一部とすれば、社長の所得税の負担が減らせます。

名義変更する際の注意点

名義変更の際には、解約返戻金がなく、金銭の授受がなくとも、税務上は保険契約を評価してその金額で譲渡したとみなされますので注意しましょう。

解約返戻金のある医療保険の場合、返戻金の金額を給与または退職金として支給する処理となるため、もし多額な場合、所得税の負担が重くなる可能性があります。しかし解約返戻金がなければ、医療保険はそこまで大きな評価金額にはならないでしょう。名義変更時に多額の所得税がかからないようにするためには、解約保険金がないタイプを選ぶとよいでしょう。

医療保険を法人で加入する際の注意点

名義変更のほかにもいくつか注意点があります。主なものは以下のとおりです。

法人で受け取った保険金は益金になる

保険金が出た場合、法人に入金されれば、益金として法人税の対象になります。個人加入であれば非課税ですが、法人の場合、支払保険料は損金、逆に受け取った場合は益金となります。全額を無税で受け取れるとして資金計画をたてないように気を付けましょう。

社長に渡したい場合は、給与扱いになる

もし受け取った保険金を社長に渡したい場合には、社長への給与扱いになってしまいます。
社長を始め役員の報酬は定期同額が原則なので、これを超えた部分は損金不算入になるうえに、所得税もかかってしまいます。これではせっかく支給しても、法人税、所得税の税負担が多くなってしまうでしょう。

このため、法人契約の医療保険では、社長に渡すのではなく、法人の資金として使用することを目的とするべきでしょう。

ただし、社長に「見舞金」として支給する場合には、社会通念上相当とされる金額の範囲内であれば、福利厚生費として損金計上できます。この金額は5万円程度が一般的な相場とされています。
また、見舞金として渡す場合には「社長だけでなく従業員全体が同じ条件で支給する」という見舞金規程を作っておきましょう。

受取人は法人にする

法人契約で、もし受取人を法人とせずに社長とした場合には、保険料の負担は法人、受け取るときは社長になるため、保険料は法人から社長への給与扱いになってしまいます。
特に社長を始めとした役員を被保険者とする法人保険は、受取人を法人としておきましょう。

以上、社長を被保険者とした法人契約の医療保険について、そのメリットと注意点をご紹介しました。

保険は損金を増やす目的ではなく、本来の目的のために加入すべきものです。
しかし名義変更により保障も続き、損金を増やすことができるなら、検討する価値はあるでしょう。ただし注意点もありますので、自社の状況と、保険に加入する目的を総合的に勘案して決めるとよいのではないでしょうか。

おわりに

今回は、生命保険の種類と近年の税制改正による影響をご紹介してきましたがいかがでしたでしょうか。

保険商品の本来の目的は「日常生活で起こる様々なリスクへの備え」であるため、税負担の軽減だけを重視するのではなく、各種保険の特徴を踏まえ、保険契約を上手に活用していくことが大切と言えるでしょう。

今回ご紹介した内容が、生命保険に関する理解の一助となれば幸いです。

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