ニュースを解説|ストックオプションの行使利益、申告漏れ合計60億円
目次
1 ストックオプションの行使利益の申告漏れが多発
企業が役員や従業員に対する報酬の一環として付与するストックオプション(社内向けの新株予約権)をめぐり、その行使によって得られた利益の申告漏れが多発していることが明らかになりました。
2025年10月20日に会計検査院が発表した調査によると、申告漏れの総額は約60億円規模に上る可能性があるとのことです。
これを受けて、国税庁は全国の税務署に対し、ストックオプションに関する調査を厳格化する方針を通知しました。
2 ストックオプションとは
ストックオプションとは、会社の役員や従業員が、将来自社株をあらかじめ定められた価格で取得できる権利を指します。
企業が通常の給与とは別にインセンティブとして付与することが多く、特にスタートアップ企業などで導入が進んでいます。
<具体例>
たとえば、ある社員に「1株あたり1,000円で自社株を買える権利」が与えられており、行使時点の株価が3,000円だった場合、1株あたり2,000円の差額利益が生じます。
この差額部分は「行使利益」として所得に該当し、通常は給与所得として課税(税制非適格型の場合)されることが多いようです。
3 なぜ申告漏れが多いのか
ストックオプションは、導入している企業が非常に少なく、一般的な認知度も低い制度です。さらに、日本では年末調整という制度が整っており、会社員が自ら確定申告を行う文化があまり根付いていないことも、申告漏れを助長する一因となっています。
4 ストックオプションを行使した場合は、税理士に相談を
ストックオプションの課税関係は、非常に複雑で難解です。
行使利益の計算、所得区分の判定、税制適格・税制非適格など、専門的な知識を要する部分が多く、個人で正確に申告を行うのは非常に困難なため、ストックオプションを行使した場合には、税理士に相談し、申告書を作成してもらいましょう。
