
【賃上げ促進税制の教育訓練費について】具体例を挙げながら解説
目次
はじめに
令和6年度の税制改正により、多くの法人や個人事業主が、中小企業向け賃上げ促進税制の適用を検討することが予想されます。この税制は、企業の賃上げを促進するために設けられたもので、一定の要件を満たすことで適用される2つの上乗せ要件が設定されております。
本記事では、その中でも中小企業向け賃上げ促進税制※における「教育訓練費」の上乗せ要件に焦点を当て、適用要件や対象となる教育訓練費について、具体例とともにご案内します。
※適用対象は、青色申告書を提出する中小企業者等(資本金1億円以下の法人、農業協同組合等)又は
従業員1,000人以下の個人事業主です。
※令和6年度税制改正の賃上げ促進税制の内容について、詳細はリンクよりご確認ください。
※本記事の内容は、令和6年4月1日以降開始の事業年度用(個人事業主は令和7年分以降用)を
対象としております。
※参考 中小企業向け 賃上げ促進税制ご利用ガイドブック
教育訓練費の適用要件と控除率の上乗せ

賃上げ促進税制には、教育訓練費の上乗せ要件が設けられております。これは、企業が国内雇用者に対して職務に必要な技術や知識を習得させるために支出した教育訓練費が、一定の要件を満たす場合に適用されるものです。
教育訓練費の適用要件
教育訓練費の上乗せ要件を適用するためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 教育訓練費の額が前事業年度と比べて5%以上増加していること
- 適用事業年度の教育訓練費の額が適用事業年度の雇用者給与等支給額の0.05%以上であること
※前事業年度の教育訓練費が0円の場合でも、上乗せ要件を適用することが可能です。
税額控除率の上乗せ
上記の適用要件を満たした場合、税額控除率は10%の上乗せがされます。
- 雇用者給与等支給額が前年度と比べて1.5%以上増加した場合:25%
- 雇用者給与等支給額が前年度と比べて2.5%以上増加した場合:40%
※令和6年度改正で新設された「くるみん認定」や「えるぼし認定」等の上乗せ要件とも併用が可能です。
ただし、税額控除額は法人税額又は所得税額の20%が上限になりますのでご留意ください。
明細書の保存
上乗せ要件を適用する場合には、前事業年度及び適用事業年度の教育訓練費の額について明細書を作成し、保存する必要があります。
教育訓練費の対象者
教育訓練費の対象者は、法人又は個人の国内雇用者です。
以下に該当する者は教育訓練費の対象外となりますので、ご注意ください。
- その法人の役員、又は個人事業主
- 使用人兼務役員
- その法人の役員、又は個人事業主の特殊関係者※
※特殊関係者とは、次の方が該当いたします。
(1)役員の親族
(2)事実上婚姻関係と同様の事情にある者
(3)役員から生計の支援を受けている者
(4)上記の2又は3と生計を一にする親族 - 内定者等の入社予定者
従業員の雇用がない法人や個人事業主については、対象者がいないため本制度の適用はありません。
具体的な教育訓練費の範囲

対象となる教育訓練費の範囲は以下のとおりです。
1.会社が自ら教育訓練等を行う場合の費用(外部講師謝金等、外部施設使用料等)
- 法人等が国内雇用者に対して、外部から講師等を招き、講義・指導等の教育訓練等を行う費用
- 外部講師等に対して支払う報酬、料金、謝金その他これらに類する費用
- 法人等が国内雇用者に対して、施設等を賃借又は使用して、教育訓練等を自ら行う費用
- 施設・備品・コンテンツ等の賃借又は使用に要する費用
- 教育訓練等に関する計画又は内容の作成について、外部の専門知識を有する者に委託する費用
(具体例)
・教育訓練のために会社が負担した外部講師の交通費や宿泊費等
・以下のeラーニング費用等
▷職務に必要なもの(資料作成、プレゼン、データ分析、業務効率化、ChatGPT等のツール活用等)
▷事業内容や業界を理解するため、又は職務の技能を向上させるためのもの
▷国内雇用者に部下・後輩ができた場合のリーダーシップ研修等
2.他者に委託して教育訓練等を行わせる場合の費用(研修委託費)
- 法人等が国内雇用者の職務に必要な技術・知識の習得又は向上のため、他の者に委託して教育訓練等を行わせる費用
- 教育訓練等のために他の者に対して支払う費用
(具体例)
・民間教育会社、商工会議所等の外部教育機関に委託した教育訓練費用等
・教育訓練のために他の機関に委託した講師の人件費や施設使用料等
3.他者が行う教員訓練等に参加させる場合の費用(外部研修参加費)
- 法人等が国内雇用者の職務に必要な技術・知識の習得又は向上のため、他の者が行う教育訓練等にその国内雇用者を参加させる費用※
- 他の者が行う教育訓練等に対する対価としてその他の者の支払う授業料、受講料、受験手数料その他の費用
※国内雇用者が費用の一部を負担する場合は、その負担された金額を教育訓練費から控除する必要があります。
(具体例)
・職務に関連のあるセミナー参加費用等
・職務に関連のある資格試験や検定試験の受験手数料等
教育訓練費の対象とならないもの
以下のような費用は、賃上げ促進税制における教育訓練費の対象外となりますのでご留意ください。
- 法人等がその使用人又は役員に支払う教育訓練中の人件費、報奨金等
- 教育訓練等に関連する旅費、交通費、食費、宿泊費、居住費(研修の参加に必要な交通費やホテル代、海外留学時の居住費等)
- 福利厚生目的等、教育訓練以外を目的として実施する場合の費用
- 法人等が所有する施設等の使用に要する費用(光熱費、維持管理費等)
- 法人等の施設等の取得等に要する費用(施設等の減価償却費も対象外)
- 教材等の購入・製作に要する費用(教材となるソフトウエア等の開発費を含む)
- 教育訓練の直接費用でない大学等への寄附金、保険料等
(具体例)
・福利厚生目的又は自己研鑽目的のeラーニング・セミナー参加費用、本や教材の購入費用
・職務に関連のない資格の予備校の受講料や資格の受験料
用語の定義
教育訓練費
教育訓練費とは、法人又は個人事業主が、国内雇用者に対して、職務に必要な技術や知識を習得させ、又は向上させるために支出する費用のうち一定のものをいいます。
国内雇用者
国内雇用者とは、法人又は個人事業主の使用人のうち、国内に所在する事業所について作成された賃金台帳に記載された者を指します。これには、パート、アルバイト、日雇い労働者も含まれます。ただし、その法人の役員や、役員又は個人事業主の特殊関係者は含まれません。
最後に
賃上げ促進税制の適用がある法人及び個人事業主において、教育訓練費の要件を満たすことで、さらに高い控除率を享受することができます。教育訓練費がその上乗せ要件を満たしているか確認する際に、本記事の内容をお役立てください。
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